運命の事業資金

運命その

私は大手L自動車の下請の下請、つまり孫請の会社経営者である。従業員10名程度の町工場だ。同じ町内の多くは古くからの工場を廃業してしまった。見切りをつけたというのが本当かも知れない。これまで何とか生き延びて来たが、この数年で、L自動車からの仕事は半減した。それに伴い従業員も半分以上辞めてもらったという状況である。 そこで昨年より、別の大手S自動車の仕事を獲得した。しかし、完成品の納品から入金まで4か月もあり、資金繰りは厳しい状況のままだった。仕事がなくなるよりましかということで日々仕事に精を出していた。

そんなある月初めの日、L自動車の下請会社A(私の会社への発注元)の営業部長がやって来た。営業部長は、世間話の後、実はと話し始めた。その下請A社も、L自動車からの仕事が更に減り、仕入れ単価の値下げ要求が厳しいという話である。そこで已む無く、来月からは下請会社を絞って行かざるを得ないと言う。その下請リストラの対象の一つに当社が入っているということである。まだ決定ではないがと言い残して部長は帰った。

そしてその月の月末、A社が不渡りを出したという連絡が取引銀行よりあった。ということは、A社の手形割引をしていた分は当社が被り、更に来月からは入金が半分以下になり、当社の手形決済が厳しくなるということになる。最近新しく仕事を貰うようになったS社には相談できるほどの取引実績はまだない。一方、これまでの取引銀行も警戒をし始めた。手形のジャンプも認めないと言って来た。他の銀行の窓口にも相談に行ったが、取引がないということで相談に乗ってくれなかった。あっという間に手形決済の月末を迎え、当社も不渡りを出してしまった。それから数日間は債権者が連日押し掛け、強引な債権者は仕事用の機械を引き揚げてしまった。従業員の給料を払う現金もなく、ただひたすら、頭を下げるだけである。

それから一月後、古くからの友人である行政書士のM氏と話す機会があった。そのM行政書士によると、そのような元請会社が倒産したような場合、連鎖倒産にならないようにするための「セーフティネット」とかいう緊急事業資金の公的融資制度があるそうだ。早く国金や市役所、商工会議所などに相談すれば何とかなったのではないかと説明してくれた。不渡りを出して、工場の機械もほとんどなくなった今では、もう遅すぎる状況だ。もう二月前、その話を聞いていたら何とか対策が取れたかも知れない。後悔しても後悔し切れない。

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