運命の事業資金2

運命その

私は現在、地元でも大手に入る測量会社に勤務している。もうすぐ勤務10年となり、役職は課長である。年度末になると残業は多いが、それなりの給料を貰っており、会社に対しての不満はない。ただ、5年前に決断できなかったことを今でも後悔している。

それは、平成12年に私は国家試験である土地家屋調査士試験に合格した。合格率5%前後の難関試験であり、3度目の受験でようやく合格できた次第である。現在の会社に入社した当時から、いつか自分の事務所(会社)を持ちたいと思っていたので、毎月給料の中から貯金していた。合格した年には300万円ぐらいにはなっていた。ただ、知人の土地家屋調査士から聞いた話では、開業時には最低500万円ぐらいの事業資金が必要だろうということだった。あと200万円足らずに悶々とした日々を送っていた。

一方、当時から付き合っていた彼女がいた。彼女は母子家庭でとても経済的に余裕のある状況ではなさそうだった。それから半年後、彼女と結婚することになった。いわゆる「できちゃった婚」である。結婚式や新居の費用などで貯金はほとんどなくなってしまった。その後、2人目がもうすぐ生まれる予定である。妻は高い家賃を毎月払うより、住宅ローンを組んで一戸建ての家を買いたいと言い始めている。妻の母とも同居したいらしい。

これではとても会社を辞めて独立したいなどとは言い出せない。妻や子供を路頭に迷わせることにならないとも限らないからだ。また、資金もまったくない。5年前の試験に合格した際に、あと200万円の事業資金が都合ついていたなら、今頃は生き生きとして働いていたはずだ。それから数年後、会社の元部下が試験に合格して土地家屋調査士の事務所を開業した。開業祝の席で、こっそりと開業資金について尋ねてみた。300万円の自己資金と国金から200万円借りることができたという。「開業する者にも貸してくれる所があるのか」と一人呟きながら、その日は深酒となってしまった。しかし今更、5年前に時計の針を戻すことはできない。